プロダクション・ノート

映画『風切羽〜かざきりば〜』6月22日(土)より全国ロードショー

その3 サヤコとケンタが誕生するまで Part 2(テキスト/小澤雅人)

売れっ子の二人なのでスケジュールを確保するのに苦労したが、なんとか撮影までに三回だけ打ち合わせとリハーサルの時間を取ってもらった。

一回目は、まず打ち合わせ。撮影の約三週間前、僕と秋月三佳、戸塚純貴の座談会のような形だった。彼らが演じるサヤコという人物、ケンタという人物の設定やそれぞれの背景、役柄のイメージについて僕から説明し、またそれについて意見を交わした。サヤコ、ケンタとも若い二人にはハードな設定で、さぞ戸惑ったことと思う。 次回の打ち合わせまでにそれぞれの人物像について考え、向き合い、彼らの中に取り込んでくることを宿題とし、また参考になりそうな本やDVDを渡した。そのとき渡したのは、秋月三佳にはダルデンヌ兄弟の「ロゼッタ」、戸塚純貴には同じくダルデンヌ兄弟の「イゴールの約束」。次のリハーサルまで約二週間開くので、その時間を有効に使い、役を少しでも近付けてほしかった。

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二回目は撮影の約一週間前。彼らなりに消化してきた役柄をもとに、リハーサルを行った。脚本の中の数シーンをピックアップして実際に芝居をしてもらいつつ、そこに修正を加えていく、という形を取った。そのとき僕がこだわったのが、二人の出会いのシーン。そこで二人の関係性やそれぞれの性格、しゃべり方、仕草などが決まってくる。逆に言うと、このシーンで僕が思い描いているイメージに二人を近付けることができれば、あとはそれほど細かくやる必要はないとも思っていた。

これがなかなか苦戦した。戸塚純貴は、僕が渡した「イゴールの約束」の主人公のように、ボソボソと話し始めた。だがケンタは道行く見知らぬ人に突然「僕のこと知りませんか?」と聞く変わった少年。自信なさげな人間はそんなことをしないだろう。お互い話し合いながら、戸塚純貴なりのケンタをつかめるように試行錯誤した。

秋月三佳演じるサヤコは、人に対してどのような態度をとるのか。その方向性がこのシーンで決まる。最初、サヤコは普段の秋月三佳のイメージそのままに、優しい少女だった。だがサヤコは、数々の悪意や裏切りを経験してきた少女。人に対して素直になれるわけがない。さかんに「もっと攻撃的に!」と要求した。最初は遠慮もあったと思うが、徐々にあの刺々しいサヤコの片鱗が見えてきた。(Part3に続く)

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