ディレクターズ・メッセージ

映画『風切羽〜かざきりば〜』6月22日(土)より全国ロードショー

「風切羽〜かざきりば〜」制作における思い

私は以前から、社会や世間とうまく折り合いのつけることが出来ない人たちに関心を抱き、彼/彼女らをモチーフにしていくつかの物語を綴ってきました。今回私が取り上げたのは、最も信頼し愛されるべき親からの愛情を受けられずに育った少女の物語。彼女の心理や背景を細かく分析していくうちに、児童虐待という難題に行き着きました。

日本の児童虐待における対策は、欧米諸国に比べ30年遅れていると聞きます。昨今の日本では、世間の児童虐待に対する関心が少しずつ高まっているとはいえ、地域住民として隣の家のいざこざに巻き込まれたくないという思いから、時に無関心を装ってしまうことも少なくないようです。
しかしそういった無関心は、時に、わが子への不適切な扱いを止めたくてもどうしたら良いのかわからず、結果的に孤立してしまう親を生み出し、なにより虐待によって小さな子どもが死んでしまうという悲しい事件へ事実つながっています。

そのような世間の認識の歪みを解き、少しでもこの根深い問題に興味・関心を持ってもらいたい、という思いが「風切羽」に込められています。

児童虐待という暴力が描く一つの可能性を通して—

虐待を受けた子どもは実際にどういう経験をするのか。そして子供の頃に負った傷(精神的にも肉体的にも)は大人になってどういった影響を及ぼすのか。

さまざまな虐待問題の資料や書籍を紐解くと、子ども自身、虐待の歴史をはねのけ、希望を持って人生を歩んでいる子もいれば、人間不信に陥る子どもや、他人に対して衝動的で攻撃的な態度を取ったり、場合によっては非行に走ったりする子、逆に他人と全く関わらず引き篭もる子や、アルコールや薬物、異性関係に依存してしまう子も少なからずいると聞きます。

そのような子ども達、あるいはそのような経過を経た大人を、 世間では“絡みづらい人”、というレッテルを貼り、変人扱いしてしまうこともありますが、私は一つの切り口として、児童虐待という問題とその背景を世間に知っていただき、彼らは彼らなりに苦しんでいる、と伝えたい思いがあります。

そして、このような問題で苦しんでいる子どもたちはもちろん、子育てで悩む親たちに対して、時にしつけとして正当化される暴力が、場合によっては子どもだけでなく、親に対しても重大な悪影響を及ぼしうること、言い換えると虐待から子どもたちの非行などにつながるプロセスを、一つの可能性として啓発していければとも思っています。

映画というメディアを通して、世界を変えるきっかけに

私は「風切羽」の制作を通じて、児童虐待問題というものの難しさ、複雑さに気付きました。とても一本の映画だけでは描写しきれない問題が山積みとなっています。今、既に第二弾として企画している児童虐待問題を扱う映画では、虐待加害者である親の心理に焦点を当てた物語を予定しています。なぜ親は子どもを虐待してしまうのか?親の生育歴に着目しながら、予防的な地域支援から、介入で関わる医療-福祉-司法機関までがどのように多機関連携の中で対応していくのかを描き、現場に即した具体的な事象を通して問題提起していくつもりです。

「風切羽」を観て頂いた皆様の周りにも、今まさに児童虐待で苦しんでいる子ども達が必ずいます。この映画をきっかけに周りのご家族やご友人、学校や職場などでも目を向けて頂き、児童虐待問題について考える機会が少しでも増えれば、と思っております。

監督:小澤雅人